[ものしりはかせバックナンバー]
中央図書館こども図書室ものしりはかせ
このコーナーでは 図書館のしくみを すこしずつしょうかいするよ!
みんなも 図書館ものしりはかせをめざそう!
(2009年 5-6月号 より)
今回のものしりはかせは、

本 
~紙がなかった時代には~



図書館にはたくさんの本があります。
絵本や小説、地図やずかんなど、大きさやページ数はさまざまですが、
文や絵がかかれている、たくさんの「紙」をひとつにしたものを、
わたしたちは「本」とよんでいます。
あおほん
 
「紙」は、わたしたちのまわりにたくさんあるので、
「本」が「紙」でできていることは、あたりまえと思ってしまいますね。

では、大むかし「紙」がなかった時代には、「本」もなかったのでしょうか。

今回は、ものしりオバケちゃんオバケちゃん が、「本」がいつごろ、どんなかたちで作られたのか、
しょうかいしてくれます。

クレヨン
こども 「紙」がなかった時代には「本」もなかったの?

オバケちゃん じつは、「本」は「紙」が発明されるまえからあったんだよ。 「紙」のかわりに、いろいろな材料を使っていて、かたちもいろいろだったんだ。

こども どんな材料を使っていたの?

オバケちゃん 草や、ねんど、動物の皮、木の葉、木のふだなど、その土地によって、ちがった材料を使っていたよ。

クレヨン


クレヨン  草でつくられた本
古代エジプトでは、文字をきろくするためのパピルスを作りました。
パピルスは、パピルスという植物のくきから作られます。

~パピルスのつくりかた~
1.パピルスのくきの皮をむく。
2.うちがわのやわらかいぶぶん(「ずい」といいます)をうすくさく。
3.「ずい」をローラーでおしのばし、ほそながくして水につける。
4.水につけた「ずい」を、たてよこにかさねてならべる。
5.ぬのにはさんで、おもしをかけて、かわかす。

パピルスは、おりまげによわいので、今の「本」のように、とじるのにはむきませんでした。
そこで、なんまいもつなぎあわせて、長い巻き物のかたちをした「本」ができました。
長さ4メートルのものもあるんだって。
英語で紙のことをペーパーといいますが、これは5000年も前の紙「パピルス」からきている言葉だといわれています。

パピルス
 

クレヨン


クレヨン  ねんどでつくられた本
メソポタミアでは、ねんどで本をつくりました。

※メソポタミア・・・ギリシャ語で「2つの川にはさまれた土地」といういみで、ほぼ、今のイラクの国にあたります。

~ねんどの本ができるまで~
1.メソポタミアの土地には、大きな川が流れています。
2.上流からこまかい土がはこばれ、ねんどの層(そう)が作られます。
3.そのねんどに、今から5000年ほど前から、絵文字がきざまれるようになりました。
4.文字をきざんだら、しぜんにかわくのを待ちます。

大事なものは窯(かま)でやいて、かたく丈夫にして保存しました。
メソポタミアの人たちは、やわらかいねんどの板に、アシのくきを三角形に切って作ったペン先で文字をきざみました。

メソポタミア
 

クレヨン


クレヨン  皮にかかれた本
エジプトで作られたパピルス(紙)の作り方が広まり、たくさん作られるようになったので、材料となるパピルスが、 たりなくなってしまいました。そこで新しく「本」の材料に使ったのが、ヒツジやヤギの皮からつくる、羊皮紙(ようひし)です

~羊皮紙(ようひし)のつくりかた~
1.皮をきれいな水であらう。
2.石灰水(せっかいすい)に10日間くらいつける。
3.取り出して、うらおもてに残っている毛や肉をきれいに取る。
4.もう一度、石灰水(せっかいすい)につける。
5.それを木のわくに張り、かわかし、チョークの粉をかけ、かる石でなめらかにする。

動物の皮はうらおもてに書けるし、おりたたむこともできるし、巻くこともできるので、今と同じ「本」のかたちにも、 巻き物にもちょうどよい材料となりました。また、なめらかで、こまかい絵やもようを書くのにもぴったりでした。

羊皮紙
 

クレヨン


クレヨン  木の葉にかかれた本
インド、スリランカ、タイなどの国では、ヤシの木の葉に文字や絵を書きました。

~木の葉の本ができるまで~
1.ヤシの葉の、はばの広いところを使って、同じ大きさに切る。
2.なんまいも重ねて、真ん中にあけた穴にひもを通して、つづりあわせる。
3.いちばん上と下に、板でできた表紙をつける。

498枚のヤシの葉を重ねて作られた「本」もあるんだって。

ヤシの葉

クレヨン


クレヨン  木のふだにかかれた本
中国では、今から3000年以上前に、ウシの骨やカメのこうら、銅など、多くのものに文字や絵を書いていました。
その中でも気軽に使ったのは、木や竹の「ふだ」です。
このふだは、ほそ長い板で、1枚に1行ずつ文章を書きました。
長い文章は、なんまいものふだを、ひもであんで、まとめて「本」にしました。
しかし、木の板でできた「本」は重くてかさばります。
たくさんあると、おき場所にもこまります。
持ち運びもたいへんでした。

それをなんとかしようとして「紙」が発明されたといわれています。

かめのこうら

クレヨン

クレヨン
こども ふうん。「紙」ができる前は、いろいろな材料でできた「本」があったんだね。
ところで「紙」は、だれがどうやって発明したの?

オバケちゃん エジプト人がパピルスを作ったように、中国人は麻(あさ)のせんいから「紙らしいもの」を作ったよ。
この麻(あさ)の紙は、かたくて文字が書きにくかったので、もっとよいものを作ろうとしたのが、中国の蔡倫(さいりん)という人 (紀元100年ころの人)なんだ。
蔡倫(さいりん)は、麻くず、魚のあみ、ぼろ布や植物の皮などの材料をつかって「紙」を作ったといわれているよ。

中国の紙の作り方は西洋の国々に伝わり、それまで羊皮紙(ようひし)を使っていた西洋人も、この「紙」の使いやすさを知って、やがて「紙」で「本」が作られるようになったんだ。

クレヨン

クレヨン  ~紙のつくりかた~
1.麻くず、魚のあみ、ぼろ布や植物の皮などの材料を水によくひたし、あらう。
2.こまかく切りきざむ。
3.焼いた草木の灰を入れて、灰汁(あく)をつくり、切りきざんだ材料をつける。
4.灰汁(あく)につけた材料を煮る。
5.煮た材料を水あらいする。
6.うすでつき、さらに水あらいする。
7.どろどろになったものを、竹のすのこですくいとる。(紙をすく)
8.すいた紙の水分をとり、かわかす。

紙

クレヨン


クレヨン
こども 「本」が「紙」でできているのは、あたりまえと思っていたけれど、いろんなくふうがあって、とても長い時間をかけてできたものだったんだね。

オバケちゃん そうそう、「本」にはとても長いれきしがあるんだ。今回は、みんなにわかりやすいように、ごくかんたんにしょうかいしたよ。もっとくわしく知りたいひとは、図書館に良い本があるんだ。パピルスや羊皮紙(ようひし)のつくり方なども、写真や絵が入っていて、わかりやすいよ。ぜひ読んでみてね。


「本のれきし5000年」 たくさんのふしぎ傑作集
辻村 益朗 作
  福音館書店

「知」のビジュアル百科 「文字と書の歴史」
カレン・ブルックフィールド 著者
浅葉 克己 日本語版監修
あすなろ書房

「紙」の大研究1 「紙の歴史」
丸尾 敏雄 監修  
  樋口 清美 構成・文
岩崎書店


クレヨン



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